皆さんは「ハヤ」という魚を知っていますか?
在来種であるコイ科の淡水魚の中で、中型で細長い体型をもつ魚の総称で、
ウグイオイカワアブラハヤタカハヤカワムツヌマムツなどが代表的です。
「ハヤ」と一括りに呼ばれていますが、それぞれが個性豊かで魅力がいっぱいの魚たちなのです!

今回はそんな「ハヤ」と呼ばれる魚について
生態や特徴の解説を行います。

「ハヤ」ってどんな魚?

ハヤとは、在来種であるコイ科の淡水魚の中で、中型で細長い体型をもつ魚の総称です。
ハエハヨとも呼ばれ、漢字では「」、「 」「 芳養」と書きます。

釣りの用語としてや、各地での方言呼称に用いられることがあり、
アブラハヤやタカハヤのように標準和名に「ハヤ」が含まれた種も存在しています。

「ハヤ」と呼ばれる魚としては、 ウグイをはじめ、アブラハヤタカハヤオイカワカワムツヌマムツ、などが代表的な魚です。

それではそんな主にハヤと呼ばれる6種類の魚についての解説をします。

ウグイ

通常色のウグイ

ウグイは幅広い分布から別名や地方名が多い魚です。
ハヤと呼ばれる種の中では一番大型になる魚で、50cm以上の個体の事例もあるほどです。
また、強酸性の水質の環境下でも生きていける強い生命力がとても注目されている魚でもあります。

名前 / 学名ウグイ / Tribolodon hakonensis
分類コイ目コイ科ウグイ亜科
別名 / 地方名アイソ、アカハラ、イダ、クキ、タロ、ニガッパヤ、イダ、ヒヤレ、イス など
体長主な成魚のサイズは15〜30cm程度、最大50cmほどの個体も
分布沖縄地方以外の日本全国に分布
主な生息地河川の上流から下流、湖やダム、汽水域、海水域にも生息
食性雑食
一般的に流通はしない魚で、味においても小骨が多く泥臭いと言われているが、
淡水魚らしいたんぱくな白身魚でクセは少ない。
長野県や栃木県などの地域では郷土料理として親しまれている。
旬の時期は産卵期である3~6月か脂の乗った12~2月。
特徴・普段は銀色の体色だが、 繁殖期の3~6月になると体色が鮮やかな橙色に変わる。
・強酸性の水質でも生きていける強い生命力を持つ。
近縁種マルタウグイ、ウケクチウグイ、ジュウサンウグイ、エゾウグイ

ウグイの近縁種

ウグイはマルタウグイ、ジュウサンウグイ、ウケクチウグイ、エゾウグイといったように、国内でもウグイを含む5種類のウグイが生息しています。
こちらの記事は主にウグイについての解説となりますのであらかじめご了承ください。

ウグイに似ている魚

ウグイは分布が広く、通常色のウグイはこれといった目立つ特徴がない魚なので、さまざまな魚と見間違えられてしまいます。判別のポイントは目やウロコの大きさ、体の模様、ヒレの特徴などから判別します。

アブラハヤ

アブラハヤ

アブラハヤは、油をぬったように身体のぬめりが強く、名前の由来もそんな特徴から命名された説がある魚です。
分布も幅広く、小さな小川や用水路などにも生息しているところからか、子どもの川遊びで捕まえられる魚として馴染み深い魚です。

名前 / 学名アブラハヤ / Rhynchocypris lagowskii steindachneri
分類コイ目コイ科ウグイ亜科ヒメハヤ属
別名 / 地方名アブラメ、アボジャコ、ヤマガワ、ヌメ、ヌメリ、タンバエ、タゴバヤ、クソバエなど
体長主な成魚のサイズは10〜15cm程度
分布本来の分布域は、日本海側では青森県から福井県にかけて、
太平洋側では青森県から岡山県にかけて
主な生息地河川、湖・ダムなど
食性雑食
一般的に食用にはされないが、苦味が特徴的な魚。
内臓を取り除き、天ぷらやフライ、から揚げなどの揚げ料理にするのがおすすめ。
特性・近縁種のタカハヤとの交雑が生じている。
・神奈川県や岡山県などの一部地域では準絶滅危惧種に指定されている。
近縁種タカハヤ

アブラハヤに似ている魚

アブラハヤに似ている魚は、タカハヤウグイなどが挙げられます。見分け方は身体の模様を参考にすることがおすすめですが、タカハヤとの見分け方は、同種との交雑種もいるため非常に判断が難しいので、特徴をよく見比べる必要があります。

タカハヤ

タカハヤ

タカハヤは、近縁種のアブラハヤととても似た魚で、両種の判別が難しい魚です。
アブラハヤと比べ本州では上流に生息する傾向があるため、渓流釣りにおける外道として扱われることも多々あります。

名前 / 学名タカハヤ / Phoxinus oxycephalus jouyi
分類コイ目コイ科ウグイ亜科ヒメハヤ属
別名 / 地方名アブラメ、ヤナギバイ、ヌメラ、タニバエ、ウキ、アブラハゼ、ドロバイ、ヤマトバイなど
体長主な成魚のサイズは10〜15cm程度
分布富山県-静岡県以西の本州・四国・九州・五島列島・対馬
主な生息地河川、湖・ダムなど
食性雑食
食用に流通することはないが、身体のぬめりを取った上で、唐揚げや天ぷら、佃煮等などにして食べられる。
特性・近縁種のアブラハヤとの交雑が生じている。
・近縁種のアブラハヤとの見分けが難しいが、本州ではアブラハヤより上流に生息する傾向がある。
近縁種アブラハヤ

タカハヤの見分け方・似ている魚

タカハヤはアブラハヤとよく似た魚です。身体の模様の入り方を見比べると、アブラハヤのようにはっきりとした縦帯が無く、タカハヤの体の模様は淡くて、はっきりしない場合が多いです。また、鱗が粗く、黒い小さな斑点が散在しているように見える個体が多いです。

オイカワ

婚姻色のオイカワ(提供:@ChfXWN9pzff0DkP 様)

オイカワはオスの鮮やかで美しい婚姻色から、観賞用の魚として人気が高い魚です。
また、釣りにおいての対象魚としても人気の魚でもあります。

名前 / 学名オイカワ / Opsariichthys platypus
分類コイ目コイ科ダニオ亜科ハス属
別名 / 地方名アカチバイ、ハイジャコ、ハイ、アカブト、アカンジ、ギンハヤ、ヤマベなど。
体長主な成魚のサイズは15cm〜20cm程度
分布利根川水系と信濃川水系以西の本州各地、四国の吉野川水系、九州。国外では朝鮮半島、中国東部、台湾に分布。
主な生息地河川、湖・ダムなど
食性雑食
甘露煮、唐揚げ、天ぷら、南蛮漬けなどで食用にされる。滋賀県ではなれずしの一種である「ちんま寿司」に加工される。
特性・美しい婚姻色から、観賞用としても人気の魚種である。
・カワムツやヌマムツとの交雑が生じている。
近縁種オイカワ・ヌマムツ・ハス(ケタバス)など

オイカワに似ている魚

オイカワと間違えられる魚は、同じような尻ビレの形をしている、ハス(ケタバス)カワムツ、ヌマムツなどが挙げられます。見分け方としてはハスに関しては口の形カワムツ、ヌマムツに関しては、オイカワは身体に縦の模様があるため、その模様の有無で容易に判別ができるはずです。

カワムツ

婚姻色のカワムツ

オイカワ同様鮮やかな婚姻色が魅力の魚です。味においても一般的に食用にはされないが、淡白な白身魚でとてもおいしく食べることができます。

名前 / 学名カワムツ / Candidia temminckii
分類コイ目コイ科ダニオ亜科カワムツ属
別名 / 地方名アカモト、ムツ、クソムツ、ドンバイ、ヤマジャコ、ドロムツ、シラハヤ、シマソバヤなど、
体長主な成魚のサイズは15cm〜20cm程度
分布能登半島と天竜川水系以西の本州、四国、九州に分布。国外では朝鮮半島全域、中国に分布。
主な生息地河川、湖・ダムなど
食性雑食
一般的に食用にされないが、淡白な白身魚で、唐揚げ、天ぷらにすると美味。
特性・飼育においては比較的難易度は低いが他の魚に対し攻撃的で人間に対し臆病な性格であるため、注意が必要。
・2000年頃まではヌマムツと同種と扱われていた。
近縁種カワムツ・ヌマムツ・ハス(ケタバス)など

カワムツに似ている魚

オイカワやハスなどとよく似た特徴があるが、カワムツは太い紺色の縦帯が入っており、身体の模様や顔つきで容易に判別ができます。

カワムツとヌマムツの比較(左からヌマムツ・カワムツ) 提供: @ftlh39

ヌマムツとは判別が難しいほどよく似ています。
判別の方法としては、胸ビレや腹ビレの前縁がカワムツは黄色、ヌマムツは赤みがかった色になるのが大きな違い。顔つきはカワムツのほうが口先が丸く、目が相対的に大きい印象があります。また、鱗の数がヌマムツの方が細かいといった違いがあります。

ヌマムツ

ヌマムツ 提供 : @prefabmaster

ヌマムツはカワムツととてもよく似た魚で、2000年頃までカワムツと同種として扱われていた魚です。
しかしカワムツと比べ用水路などの緩やかな流れを好む傾向があります。

名前 / 学名ヌマムツ / Nipponocypris sieboldi
分類コイ目コイ科ダニオ亜科カワムツ属
別名 / 地方名2000年頃までカワムツと同種とされていたことから基本的にカワムツと共通の呼び名が用いられる。
体長主な成魚のサイズは15cm〜20cm程度
分布静岡県から琵琶湖周辺、瀬戸内海沿岸を経て九州の有明海沿岸河川まで分布。
主な生息地河川、湖・ダムなど
食性雑食
一般的に食用にされないが、淡白な白身魚で、唐揚げ、天ぷらにすると美味。
特性・2000年頃まではカワムツと同種と扱われていた。
・カワムツと比べ、ヌマムツは用水路などの緩やかな流れを好む傾向がある。
近縁種カワムツ・ヌマムツ・ハス(ケタバス)など

ヌマムツとよく似た魚

先述したカワムツとの違いはもちろんだが、フォルムが似ていることからカワムツと合わせてウグイと勘違いされることも。

調べればわかる!「ハヤ」の魅力!

同じような見た目なことから「ハヤ」と一色単に扱われていますが、よく見比べればその違いは一目瞭然!
さらに生態や人間との関わりの歴史などを調べると、もっとハヤの魅力が解るはずです。
もしハヤ類の魚を釣り上げたら写真を撮って判別してみてくださいね!