日本の在来種である淡水魚「ウグイ」は、生息地や分布も広いため、さまざまな別名や地方名が存在します。
当協会が知るだけでもウグイの別名・地方名の数は80以上!
今回はそんなウグイの別名・地方名について、当会が知るメジャーな呼び名をピックアップ!
ハヤ、寒バヤ、猫またぎ、デイス、銀平、つけば、アカウオ、アイソ、サクラウグイ、イダ、タチイダ、パリモモ、アカハラといった呼び名の地方やルーツなどを解説していきます。
目次
80種以上ものウグイの別名・地方名
ウグイに別名が多いのは、分布の広さはもちろん、古くより人間との関わりが多かった魚だからかもしれません。
ウグイの別名一例
ハヤ(寒バヤ)、猫またぎ、デイス、銀兵(ぎんぺい)、銀白(ぎんぱく)など
ウグイの地方名一例
あいす、あいそ、いそうを、あかいお、 あかうお、あかお、 あかざこ、 あかっぱら、あかはら、あかまつば、あきわ、いぐい、いご、いごい、いす、 いだ(たちいだ)、いだい、いだこ、いだご、 いだごい、いだごろ、いだんこ、いら、うごい、 うすこーばい、 おいがい、おおうろこ、おうがい、 おぐい、おげええ、 おごい、がもた、かんざこ、かんぺ、ぐい、くき、くきばや、さくらいご、 さくらいす、ざこ、ざこお、ざっこ、しおじゃっこ、じゃっこ、 しらはえ、 すれうぐい、せばい、つきじゃっこ、とこ、のを、はい、はえ、はええ、はえっこ、はえはい、はじ、はや、はよ、はらあか、 はらか、 はらが、ひやり、ひやれ、ふじばな、 ぶどばや、 へのお、 ほんばや、 まゆ、 まるた、まるたっこ、 やなぎば、 やまこ、ゆうき、ゆうごい、ゆごい、ゆだ など
ウグイと呼ばれる魚は国内に5種類います。
まず前提として、国内でウグイと呼ばれる魚は5つの種類に分けられます。
それはウグイ・マルタ(マルタウグイ)・ウケクチウグイ・ジュウサンウグイ・エゾウグイのことです。
ウグイの別名や地方名は、国内全5種のウグイを指すものもあれば、1種だけを指すもの、はたまた他の魚種も含めた総称として指す名前があります。
ウグイの別名について
「ハヤ」、「寒バヤ」
ハヤとは、在来種であるコイ科の淡水魚の中で、中型で細長い体型をもつ魚の総称です。
ハエ、ハヨとも呼ばれます。
「ハヤ」と呼ばれる魚としては、 ウグイをはじめ、アブラハヤ、タカハヤ、オイカワ、カワムツ、ヌマムツ、などが代表的な魚です。
また、冬に獲れたウグイは脂が乗ってとても美味なことから、「寒バヤ」と呼ばれ親しまれていますが、この「ハヤ」から取られた名前かもしれません。
▼ 「ハヤ」と呼ばれる魚の解説はこちらの記事をご覧ください ▼
「猫またぎ」
「猫またぎ」とは味の悪い魚の総称で、ウグイも「猫またぎ」と言われてしまう場合があります。
ウグイの他にもヒイラギやアイゴ、旬の時期ではないヒラメやメジナなどもそう呼ばれてしまうことがあるようです。
名前のルーツは、「魚が好きな猫でも食べずにまたいで通るほど味の悪い魚」とのことですが、実際にウグイを目の前にした猫がほんとうに跨ぐかどうかは検証してみたいですね(笑)。
「デイス」
「デイス」とは、実はヨーロッパの北部やアジアのに分布するコイ目コイ科ウグイ属に分類される別種の魚のことです。分類も近い魚であり、ウグイの英名は「Japanese Dace(ジャパニーズデイス)」と呼ばれることから、省略して「デイス」と呼ぶ方がいるのかもしれません。
「銀兵(ぎんぺい)」
銀兵とは、釣りにおける生き餌としてのウグイの名称です。銀平、銀白(ぎんぱく)とも呼ばれることも。
釣具屋などで「銀兵」という魚が販売されていたら、ウグイだと認識して間違い無いです。
販売サイズは10cm前後の個体で、ヒラメやマゴチ、スズキ、青物などを狙う際に用いられます。
ウグイの地方名について
「つけば」・「アカウオ」
「つけば」とは正確にはウグイを指す言葉ではなく、ウグイを獲るための特有の漁法のことです。つけば漁は長野県上田市の千曲川を中心に盛んに行われております。
ちなみに長野県近辺ではウグイは「ハヤ」や「アカウオ」と呼ばれています。
「つけば」というのは「種付け場」の意味であり、ウグイの産卵期である4月中旬から6月上旬までの時期にウグイの産卵ができる環境を作り、そこに集まったウグイを捕獲する漁のことです。
このつけば漁で獲れたウグイは「つけば料理」として地域に親しまれ、漁が行われる時期は「つけば小屋」と呼ばれる場所で提供されています。
「アイソ」はおもに栃木県で呼ばれるウグイの呼称です。
長野県と同様に栃木県もウグイを食べる文化が今も残っており、「せつき漁」と呼ばれる漁法で漁獲されています。
栃木県は いまでもウグイを食べる文化が残っており、甘露煮や田楽などといった郷土料理が親しまれています。
「サクラウグイ」
富山県の小矢部川近辺では、産卵期の婚姻色の出たウグイを「サクラウグイ」と呼び、春の味覚として親しまれています。
田楽や唐揚げ、刺身、酢の物などにして食べられているのですが、現在は提供するお店も減っているそうです。
「イダ」、「タチイダ」、「イダゴロ」
「イダ」は高知県や徳島県の四国地方や、福岡県、佐賀県などの九州地方で呼ばれるウグイの呼称です。
また、産卵期の婚姻色がかかったウグイを「タチイダ」と呼びます。
また、宮崎県美郷町南郷では、夏に「百済の里いだごろ祭り」というお祭りが開催されています。
こちらのお祭りの「いだごろ踊り」は、ウグイの漁がルーツで、踊りの振り付けはウグイを獲る人を模したあるものであると言われています。
四国の四万十川では冬の脂の乗ったウグイを捕獲する「イタチ漁」と呼ばれる漁があります。
冬になるとウグイは群れになって淵の岩陰などに潜む。
公益財団法人 四万十財団 さま 公式ホームページ より
12月下旬から2月に行われるウグイ漁で、ウグイがこもっていそうな岩に網を巻きイタチの皮を岩の穴に差し込むと、イタチの臭いを嫌ったウグイが穴から出てきて網にかかるのだ。この漁は上流域で行われていた。
「パリモモ」、「アカハラ」
「パリモモ」とはアイヌ語で「エゾウグイ」を指す言葉です。
エゾウグイと アイヌは深い関わりがあるようで、今でも屈斜路湖で獲れたエゾウグイを刺身などにして提供する飲食店が現存します。
また、北海道でウグイは「アカハラ」と呼ばれており、その名の方が馴染みが深い方が多いかもしれません。
みなさんの知るウグイの別名・地方名について情報をお寄せください!
当協会でもまだ把握できていないほど、ウグイの別名・地方名は多く存在します。
ウグイのさまざまな呼び名を深く知ることはその地域の文化や風土を学ぶことにつながります。
ぜひ皆さんの地域で呼ばれるウグイの呼び名について、情報をご提供いただけてら幸いです。