みなさんは、「ウグイ」という魚を知っていますか?
ウグイ(学名:Tribolodon hakonensis)は、コイ目コイ科ウグイ亜科に分類される、日本の在来種である淡水魚です。
ウグイは沖縄県を除く日本全国に分布しており、河川の上流から下流、ダム、湖などに生息しています。また海に下るタイプのウグイもおり、汽水域や海水域でも生息が確認されています。
食性は雑食で、ミミズや昆虫、藻、小魚、魚卵などなんでも食べます。そんな食性が故に、よく釣れるため、釣りにおける「外道」として扱われてしまうことが多い魚でもあります。
味においては「小骨が多い」、「泥臭い」とよく言われ、一般的に流通もしないところから「まずい」と評されることも。しかし、適切な調理をすれば美味しく食べることできる魚で、淡白で上品な味わいの白身魚です。長野県や栃木県といった地域ではウグイ漁の文化が残っており、郷土料理としてウグイ料理を提供する飲食店が現存しています。
ウグイはそんな幅広い生息地と食性・味の印象からマイナスなイメージが多くある魚です。
しかし、見方を変えれば、ウグイには実はあまり知られてない魅力がたっぷりあるんです!
こちらの記事を読めばウグイのイメージがガラッと変わるはずです! 是非最後までお読みくださいね!
目次
ウグイの種類について
ウグイと一括りに言ってもウグイ、マルタウグイ、ジュウサンウグイ、ウケクチウグイ、エゾウグイといったように、国内でも5種類のウグイが生息しています。
こちらの記事は主にウグイについての解説となりますのであらかじめご了承ください。
ウグイの名前の由来・別名・地方名について
ウグイの名前の由来については諸説ありますが、「鳥の鵜(う)が食べる魚」というところから命名された説がメジャーです。
ウグイの漢字は「鯎」、「石斑魚」、「鯏」などさまざまなものがあります。
英語では「Japanese Dace」、中国語では「三塊魚」または「珠星三塊魚」と呼ばれています。
また、ウグイには多くの地方名があります。
これほど地方名が多いということはさまざまな地域に親しまれている魚だといえますね。
ウグイの地方名一例
あいす、あいそ、いそうを、あかいお、 あかうお、あかお、 あかざこ、 あかっぱら、あかはら、あかまつば、あきわ、いぐい、いご、いごい、いす、 いだ、いだい、いだこ、いだご、 いだごい、いだんこ、いら、うごい、 うすこーばい、 おいがい、おおうろこ、おうがい、 おぐい、おげええ、 おごい、がもた、かんざこ、かんぺ、ぐい、くき、くきばや、さくらいご、 さくらいす、ざこ、ざこお、ざっこ、しおじゃっこ、じゃっこ、 しらはえ、 すれうぐい、せばい、つきじゃっこ、とこ、のを、はい、はえ、はええ、はえっこ、はえはい、はじ、はや、はよ、はらあか、 はらか、 はらが、ひやり、ひやれ、ふじばな、 ぶどばや、 へのお、 ほんばや、 まゆ、 まるた、まるたっこ、 やなぎば、 やまこ、ゆうき、ゆうごい、ゆごい、ゆだ など
▼ ウグイの名前の由来や別名・地方名についての詳細はこちらの記事をチェックください! ▼
ウグイの外見について
一見特徴の少ない見た目をしているウグイですが、外見においてもとても魅力ある魚なんです!
最大サイズは50cm以上も!? ウグイの大きさについて
ウグイの成魚の大きさは一般的には20〜30cm程度と言われています。
また、稀にですが50cm以上の個体の事例もあります。
▼ ウグイの外見についての詳細はこちらの記事をチェックください! ▼
鮮やかな婚姻色が魅力! ウグイの体色について
ウグイの体の色はこげ茶色を帯びた銀色で、体側に1本の黒い横帯があります。腹部は繁殖期以外には銀白色です。
また、春(3月上旬から5月中旬)になると雌雄ともに鮮やかな3本の朱色の条線が走る婚姻色へ体の色が変わります。
ウグイの生態について
ウグイは沖縄県を除く日本全国に分布しており、河川の上流から下流、ダム、湖などに生息しています。また海に下るタイプのウグイもおり、汽水域や海水域でも生息が確認されています。
食性は雑食で、ミミズや昆虫、藻、小魚、魚卵などなんでも食べます。
産卵は春から初夏にかけて集団で行われます。
産卵の場所は流れの緩やかな川の浅瀬で、藻のついていない玉砂利が多い場所を好む傾向があります。
ウグイが外来種の脅威を守る可能性がある!?
ウグイは魚卵を食べる魚であり、この性質を利用し、ブルーギルの増殖抑制に有効である可能性が示されています。ウグイが外来種の脅威から日本の生態系を守ってくれるかもしれません。
強酸性の水質でも生きてられる強い生命力!
ウグイは幅広い水域で生息している魚ですが、何よりすごいのがpH4以下の強酸性の水質の環境下でも生きられるところです!
秋田県の田沢湖や青森県の宇曽利湖(うそりこ)、北海道の屈斜路湖(くっしゃろこ)、福島県の猪苗代湖(いわなしろこ)をはじめとした湖は強酸性の湖であり、ほとんど生き物は生きることができません。
しかしウグイはこんな強酸性の水質に適応しこれらの湖に生息しているのです。
ウグイは飼育可能?飼育の難易度は?
ウグイは生命力が高い魚で、様々な水質・水温に幅広く適応します。
基本的な飼育の注意点(適度な水換えや定期的なろ過装置のメンテナンスなど)さえ注意していれば、とても飼い易い魚なんです。また、病気にも強く、ご飯も選り好みせずよく食べるので、魚の飼育が初めての方や初心者にオススメです。
▼ ウグイの飼育方法の詳細はこちらの記事をチェックください! ▼
まずい? 美味しい?ウグイの味について
ウグイの味はとても上品な味で、ニジマスのような淡白な味わいのする白身の魚です。
ですがウグイは「まずい」といわれてしまうことの多い魚でもあります。
その理由は水質の悪いところでも生きていけるが故の「泥臭さ」や、コイ科特有の「小骨の多さ」が原因だと考えています。
しかしウグイが獲れた場所の水質を確認し、個体の鮮度、時期、適切な下処理を行えば、とても美味しく食べることができます。
▼ ウグイがまずいと言われてしまう詳細はこちらの記事をチェックください! ▼
実は郷土料理としても親しまれている魚!
ウグイは実は古くから貴重なたんぱく源として各地域に親しまれている食材です。
今ではウグイを食べるという認識はだいぶ薄れてしまった印象がありますが、長野県や栃木県、富山県の一部では今でも郷土料理としてウグイを提供する飲食店が現存しています。
▼ ウグイを提供する店舗の食レポこちらの記事をチェックください! ▼
ウグイを美味しく食べる方法・レシピは?
ウグイを美味しく食べるには、その個体が取れた環境と時期、鮮度を確認し、適切な下処理を行ったうえで「泥臭さ」「小骨の多さ」を解消する調理法を考える必要があります。
ウグイのマイナスポイントを解消するおすすめの調理方法は唐揚げやフライ、燻製、甘露煮です。ウグイ本来の味を楽しみたい方であれば、塩焼きもおすすめです。
▼ ウグイの下処理方法についてはこちらの記事をチェックください! ▼
▼ ウグイのおすすめレシピについてはこちらの記事をチェックください! ▼
ウグイの旬は初冬から初夏の時期がおすすめ!
ウグイの旬は、初冬から初夏の時期までと言われています。
冬季の脂が乗った身は「寒バヤ(かんばや)」と呼ばれており、とても美味と評されています。
また、春から初夏にかけての産卵期のウグイは卵も共に楽しめる逸品です。
ウグイの漁・釣りについて
釣りにおけるウグイは「外道」と言われてしまうことが多い魚ですが、実はウグイ専門の漁があったり、初心者に優しい釣りの対象魚としてとても魅力的な魚なんです!
ウグイ専門の漁
ウグイ専門の漁として代表的なのが、つけ場漁です。
つけば漁は長野県上田市をはじめとした地域で、ウグイの産卵期である4月から6月行われます。
ウグイの産卵床を人工的に作り、そこに産卵期特有の匂いを放つおとりのウグイを入れた種箱を沈めることで、匂いにつられたウグイをおびき寄せ捕獲する漁法です。
さらに産卵のために浅瀬に集まった魚を投網で捕獲するせつき漁や、他にもあいそ漁、イタチ漁といった漁法があります。
釣り初心者にも優しい魚
ウグイの食性は雑食でミミズや川虫はもちろん、パンやソーセージなどでも釣ることができます。またルアーやフライフィッシングでも釣ることができます。
分布の広さや多様な大きさがあることから、子どもや釣り初心者でも比較的簡単に釣りを楽しめることからも川遊びにおいても親しまれている魚です。一部の釣り人界隈では、ウグイをターゲットに釣りを楽しむ「ウグイング」が小さなブームになっているとか。
釣りエサとしてのウグイ
ウグイは釣りにおける活きエサとして人気のある魚でもあります。
銀兵(ぎんぺい)などと呼ばれており、釣具屋などで販売されています。
販売サイズは10cm前後の個体で、ヒラメやマゴチ、スズキ、青物などを狙う際に用いられます。
ウグイの文化・伝説について
ウグイは、その広い生息地から、古くから全国さまざまな地域で親しまれている魚です。
特定の地域のウグイは天然記念物に指定されていたり、ウグイが発祥のお祭りがあったりと、今もウグイと人間の関係は文化として古くから根付いているのです。
百済の里いだごろ祭り
宮崎県美郷町南郷では、夏に「百済の里いだごろ祭り」というお祭りが開催されています。
こちらのお祭りの「いだごろ踊り」は、ウグイの漁がルーツで、踊りの振り付けはウグイを獲る人を模したあるものであると言われています。
天然記念物に指定・会津柳津のウグイ伝説
福満虚空蔵尊円蔵寺にはウグイに関する伝説があります。
「弘法大師が霊木を刻み、福満虚空藏大菩薩を作りました。その木片を只見川に投げ入れたところ菩薩の慈光が現われ、その木片が無数のウグイになった」という伝説です。
以来同寺に泳ぐウグイは霊魚として保護されるようになり、昭和16年には天然記念物に指定されています。